2007年08月08日

こころ 全1巻/原作 夏目漱石 作画 榎本ナリコ

夏目漱石の「こころ」は私は教科書で読みました。

そのあとずいぶん経ってから文庫本を買い、全部読破しました。

とっても素晴らしい作品だと思うので、安易な漫画化には手を出したくないなぁと思うのですが、単純に榎本ナリコ流こころがどんなものなのかが気になったので読んでみました。

舞台は明治時代から
現代に移してあり、話の大筋や登場人物の心情がわかりやすく描かれていると思います。
やっぱり絵があるというのは強い。

単純に、これを読んで一番最初に思ったのが

「Kさんが意志弱行で到底先に望みがないならば、更に意志弱行と思われる自分が自殺しないなんてどういうことだ?」

と言う事。
いやー、丁度読んだこの頃が課題に切羽詰まり始めた時だったからなんですけどね。
Kさんが死ななくちゃならないのであれば今世の中で生きていて良い人ってほんの一握りなんじゃないのか…

Kさんはなんで自殺したの?とお母さんに聞くと「純粋だったからだよ」と言われました。
じゃぁ自殺しなくちゃと思わない自分は純粋じゃないのかな…

そんな表面的な感想はこの辺にして…
別に榎本ナリコ先生が悪いわけじゃないのだが、やっぱり何かしっくりこない。
現代に置き換えられたからと言って、明治時代とは違う特別な事があるわけでもなく ただ読みやすくなった、わかりやすくなったと言うだけではないかな と思った。

読みやすい、わかりやすいってのは一般的にはいい事だと思うんだけど、これに関して言うと 複雑に絡み合っていた糸をすべて断ち切ってしまった印象がある。
1巻だけというのも展開が早過ぎる気がした。

この作者さんは本当にキャラの心情だったりを繊細に描ける人だと思うのでなんだか勿体ない気がする。
多分、現代風にアレンジしたとはいえ、夏目漱石と同じストーリーで「こころ」を伝えようとしているから どうしても物足りないものに思えてしまうのだと思う。
榎本先生がこころを読んで得た見解をもっと別の話で伝えてみれば どうなっていたのかなぁ?と思います。
現代風にアレンジするくらいならもっともっと登場人物や背景も代えてしまってもいいんじゃないかなー
節々に「こころ」を匂わせるものがあれば、オマージュとして 榎本作品になり得たんじゃないかと思います。

今のままだと「こころ」の副読本。
他の先生が描くのであればそれで満足だったかもしれませんが、榎本先生はそれで満足ではないような気がします(まったくもって私の勝手な意見です)
少なくとも私は勿体ないなぁと思ってしまいました。

それにしても現代風のシズちゃんは何というか…可愛いのだが…ただの尻軽女っぽくて嫌だなぁと感じてしまいました。

でもこれだけの作品を漫画化する事自体がまず とてつもなく難しい事なんだと思います。 きっと何やっても賛否両論あるだろうし。
そう考えると、一番誰でもすんなり読める作品に仕上がっているのではないか 思いました。
「こころ」世界を壊さず崩さず表現。それだけでもやっぱり凄い事だよなー。うん。

でも やっぱり私は物足りないなー と堂々巡り…
極端な話、「こころ」を大胆アレンジ、榎本流エロスの世界みたいなの読んでみたかった。
それこそありとあらゆるところから苦情がきそうですけどね。

漫画版「こころ」を読んだ人も読んでない人もこれから読もうと思っている人も、全員夏目漱石の「こころ」は読んだ方がいいぞ ってのが結論です。と、偉そうに言ってみたり。
ニックネーム 赤魚 at 09:26| Comment(0) | TrackBack(0) |
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